新生児の睡眠メカニズム徹底解説|生後3か月が長く寝るようになるねんねトレーニング

新生児から生後3か月までの赤ちゃんを育てているママ・パパへ。

もしみなさんが「うちの子はなんで寝ないんだろう?なんで長時間寝てくれないんだろう?」と感じているなら、それはむしろ正常な事なので安心してください。

赤ちゃんの睡眠は大人であるママ・パパと全く違うパターンであると最新の研究で明らかにされています。

この睡眠パターンを理解すれば寝ない理由もその対策として効果的な寝かしつけもできるので焦らずに行きましょう。

赤ちゃんの睡眠に対する感覚のズレ

生まれたての赤ちゃんにはまだ、昼と夜の区別がついていません。

朝起きて夜眠るという大人の一日の生活リズムとは違い

寝る → 起きる → ミルク/母乳 → 寝る

の繰り返しです。
そしてそのサイクルは非常に短く「赤ちゃんは良く寝るもの」と認識している人はちょっとした衝撃を受けると思います。

実は「赤ちゃんは良く寝るもの」というのは正しいのです。
一回の睡眠で長時間続けて寝ないだけで、一日の合計睡眠時間は長いので、このあたりの認識のズレがあるのではないでしょうか?

とはいっても長時間寝てくれないとママ・パパもなかなか休む時間が取れず身体もしんどいはず。どうすればママ・パパも休めるようになるでしょうか?

赤ちゃんは昼と夜がわからない、不規則な睡眠パターン

新生児のうちは赤ちゃんが起きやすく両親はまとまった睡眠を取ることが難しい

まずは赤ちゃんの睡眠について知ろう

赤ちゃんに長時間寝てもらうためには、まず赤ちゃんの睡眠パターンを知ることでそのヒントを得る事ができます。

大人である自分たちの睡眠パターンは、多くの場合夜に寝て、朝起きるという一貫したもので予測出来たり、予定に合わせて調整出来るものです。
それに比べて新生児から生後3か月頃の赤ちゃんの睡眠パターンは不規則で、昼も夜も関係なく寝て起きてを繰り返します(個人差あり)。

赤ちゃんが夜まとまって寝なくても普通の事だと知ってもらえれば、少しは安心できるのではないでしょうか?

寝ないならネントレの効果は?

赤ちゃんが寝ないのが普通ならネントレは効果ないのかというとそうではありません。
きちんとネントレの効果は出ますが、生後3ヶ月頃までに期待できる効果を正しく理解することが重要です。

一方で、睡眠は赤ちゃんの認知発達に大きな役割を果たします*1

ただただ赤ちゃんを寝かせようとネントレなどをする前に、まずは基本的な睡眠に関する知識を身に着け、より良い睡眠がとれるよう促す事が重要だと理解してもらいたいと思います。

一回の睡眠時間がとても短い新生児

細切れ睡眠の新生児

赤ちゃんと大人は睡眠の量とタイミングが異なります。

一般的に、健康な成人はほとんど睡眠の途中で起きることなく、単一の時間ブロックで毎晩平均で7時間眠ります*2。それに比べて生まれたばかりの赤ちゃんは、一日最大18時間の睡眠を必要としますが、細切れの短い時間ブロックに分けられます*3

それが6ヵ月になる頃には、赤ちゃんは1日平均13時間、新生児期よりも長い時間ブロックで眠るようになっていきます*4

生まれたての赤ちゃんは概日リズムがない

多くのママ・パパは、赤ちゃんに一晩中眠ってほしいと望んでいることでしょう。

赤ちゃんが静かに眠る時間が長ければ長いほど、両親はより長く眠る事が出来るのでそれは当然なのですが、残念ながら、新生児から生後3か月の赤ちゃんのほとんどは、夜中に数回目を覚まします。

なぜならばこの時期の赤ちゃんは、朝起きて夜に眠るという概日リズムが十分に発達していないからです。夜中であっても「夜は寝るもの」という認識がない(そもそも夜という概念がない)ので簡単に目を覚まします。

昼夜の区別がつくのは生後3ヶ月頃から

では、いつ頃概日リズムが整うのでしょうか?

多くの赤ちゃんは、生後3ヶ月から1歳の間に、より「大人の」睡眠パターンに近づいて行きます。つまり、生後3か月以降になると、赤ちゃんは徐々に夜の間に長い睡眠を取れるようになっていき、日中の睡眠時間も段々と短くなっていきます。

個人差があるから焦らないで

ただし、すべての赤ちゃんが「大人の」睡眠パターンと同じように眠れるようになるわけではありません。

赤ちゃんが1歳になる前に「一晩中眠っていない」場合でも心配する必要はありません。

1歳になっても夜中に1回目が覚める赤ちゃんは少なくありませんし、発達という面において必ず障害があるわけでもないので、診察を受けても病気の診断が下されないことがあります。

そのような場合は赤ちゃんの下のコラムを読んで睡眠環境が寝やすいものになっているかなど確認してみてください。確認する際はねんねのプロに相談すると詳しく見てくれます。

新生児の睡眠周期は2段階(大人は4段階)

*この段落では大人と赤ちゃんの睡眠の違いを説明しますが、ここを理解するとなぜ赤ちゃんが眠らないか深く理解できます。少々専門性の高い内容になっているので、興味のある方は是非読んでください。この段落はスキップしても生後3ヶ月までにできるネントレは理解できるようになっています。

新生児の睡眠周期はレム睡眠とノンレム睡眠が1:1で同じ時間

一般に、新生児の睡眠周期は2つの段階に分類することができ、生後3ヶ月以上の乳児の睡眠周期は4つの段階に分類されます。

新生児の睡眠周期はレム睡眠とノンレム睡眠の2つで、レム睡眠とノンレム睡眠が1:1でほぼ同じ時間になります*5

レム睡眠はよく「動的睡眠」と呼ばれ、ノンレム睡眠は「静的睡眠」と呼ばれます。

レム睡眠中の赤ちゃんは小さく動きます*6
例えば、眼球は(目を閉じていても)動き回り、手足や指をぴくぴく動かしたり、呼吸が速くなったり、口が動いたりすることがあります。逆にノンレム睡眠中の赤ちゃんはおとなしく、レム睡眠中に見せたような動きをしません。

3ヶ月頃から睡眠周期は4段階に(大人の睡眠周期)

赤ちゃんは生後3ヶ月頃から、睡眠周期が大人と同じに近づいていきます。大人の睡眠周期は4つの異なる段階に分かれており、3段階のノンレム睡眠と1段階のレム睡眠に分かれます*7

  • ステージ1(ノンレム睡眠):浅い睡眠 / アルファ波と低振幅の混合周波数活動
  • ステージ2(ノンレム睡眠):浅い睡眠 / 睡眠紡錘波とK複合体
  • ステージ3(ノンレム睡眠):最も深い睡眠 / デルタ波
  • ステージ4(レム睡眠):夢を見る睡眠 / アルファ波とベータ波

睡眠の最初の3つの段階は全てノンレム睡眠です。うち最初の2つは浅めの睡眠であり、その間に人は比較的簡単に目覚まします。

第3段階は最も深い睡眠であり、この段階にいる大人を起こそうとしてもなかなか起きないことが多いです。第4段階は、夢を見るレム睡眠です。

大人と同じ睡眠周期ができるのは5歳くらい

大人はこの順序で約90分間隔で睡眠周期を繰り返しています。

赤ちゃんは生後約3ヶ月で2段階から4段階の大人の睡眠周期に近づいてきて、完全に大人と同じようになるのは5歳くらいと言われています*8。一般的に赤ちゃんの睡眠周期では眠りに落ちた直後に短いレム睡眠に入り*9、大人は逆に睡眠周期の最後にレム睡眠に入ります。

睡眠パターンの成長とネントレ

新生児にはまず概日リズムを覚えてもらおう

赤ちゃんの睡眠パターンを理解することはねんねトレーニングに興味を持っているママ・パパにとって非常に重要です。

新生児は概日リズムをもっておらず昼と夜の区別がついていません。そんな中で一回の睡眠をより長くさせようと様々なネントレを行っても期待した効果が得られない事があります。

新生児の時は、まずは決まった時間に朝日を浴びる、昼間は明るい部屋で寝かせ夜は暗い部屋で寝かせるなどの概日リズムを覚える(昼夜の区別をつける)ような工夫と、寝る環境を安全なものにしてSIDSを防ぐことに注力する事をおすすめします。

本格的なネントレは概日リズムを覚えてから

本格的に長く寝てもらうためのネントレを行うのは、生後3ヶ月頃から始めるといいでしょう。

その頃になれば概日リズムを覚え始め、また、睡眠周期が大人のものに近づいてくるので、だんだんと1回の睡眠時間が長くなっていく時期です。

ただ寝言泣きや夜泣きの時に3分ほど様子を見ることや、抱っこのままで寝かせず、ベビーベッドの中で寝かせるといったネントレをしても問題ありません。意識的に早く始めればその後のネントレが楽になります。

新生児は起きやすい!モロー反射に気を付けよう

音や環境の変化にビクッとする赤ちゃんは可愛いですが起きやすいので注意

赤ちゃんが起きやすいのはレム睡眠が多いから

生まれたばかりの赤ちゃんは、睡眠時間の約50%をレム睡眠で眠っています。

つまり睡眠中の半分は起きやすい状態にあります。新生児のうちは最大18時間眠っているので約9時間は起きやすいレム睡眠の状態だということになります。

個人差が大きいのでしっかり観察しよう

赤ちゃんの睡眠パターンが変わると睡眠周期も変わりますが、睡眠周期の長さや成長具合は、個人差が大きく一様に説明できるものはありません。
よく赤ちゃんの睡眠周期は大人の半分、約45分と言われていますが、あくまで参考情報として、ご自身の赤ちゃんがどうなのか良く観察をしてみてください。

モロー反射にはおくるみが役に立つ

またこの時期の赤ちゃんは、眠っている最中に「モロー反射」と呼ばれるビクッとする動きをすることがあります。

これは赤ちゃんが持っている原始反射運動のひとつで、これが原因で目を覚ましてしまう赤ちゃんも少なくありません。モロー反射そのものをなくすことは出来ませんが、おくるみで手を固定して動きを抑制する事、起きてしまうのを防ぐことができます。

3か月までにするべきねんねトレーニング

寝なくても心配しないで

このように赤ちゃんの睡眠は大人の睡眠と全く違うので、大人の一日の生活リズムに合わなくて当然なのです。

うちの子はなぜ寝ないのだろうと多くのママ・パパが心配していると思いますが、合計の睡眠時間が極端に短くなければ「こんなものだろう」とちょっと気楽に考えてほしいと思います。

生後3ヶ月頃までは概日リズムとおくるみを意識

またこの時期は授乳の間隔も短いのでお世話をするママ・パパ(特に完母の場合はママの負担が大きい)は大変ですよね。

この時期に概日リズムを意識するだけでその後の睡眠周期の発達には好影響で、きっと子育ては楽になるはずなので少し意識してあげてください。

また、モロー反射を防ぐおくるみを使用することで、睡眠の途中で起きてしまうことを少なくする事も重要です。

ねんねのプロに相談すればより安心

より安全に効率的に寝かしつけや夜泣きについて勉強し、良く寝る子に育てたい場合にはねんねのプロの力を借りることを強くお勧めします。

このコラムでは研究に基づく一般論しか話せません。

子どもは個性が強く個々の特性に対応するには深く乳幼児の睡眠を勉強しているねんねのプロの知識と経験がママ・パパの何よりの味方になるはずです。

【参考文献】

  1. Tham, E., Schneider, N., & Broekman, B. (2017). Infant sleep and its relation with cognition and growth: a narrative review. Nature and Science of Sleep, Volume 9, 135-149.
  2. Watson, N. F., Badr, M. S., Belenky, G., Bliwise, D. L., Buxton, O. M., Buysse, D., Dinges, D. F., Gangwisch, J., Grandner, M. A., Kushida, C., Malhotra, R. K., Martin, J. L., Patel, S. R., Quan, S., & Tasali, E. (2015). Recommended amount of sleep for a healthy adult: A joint consensus statement of the American Academy of Sleep Medicine and Sleep Research Society. Sleep, 38(6), 843–844.
  3. Wielek, T., Del Giudice, R., Lang, A., Wislowska, M., Ott, P., & Schabus, M. (2019). On the development of sleep states in the first weeks of life. PLoS One, 14(10), e0224521.Sadeh, A., Mindell, J. A., Luedtke, K., & Wiegand, B. (2009). Sleep and sleep ecology in the first 3 years: a web-based study. Journal of Sleep Research, 18(1), 60–73.
  4. Sadeh, A., Mindell, J. A., Luedtke, K., & Wiegand, B. (2009). Sleep and sleep ecology in the first 3 years: a web-based study. Journal of Sleep Research, 18(1), 60–73.
  5. Daftary, A. S., Jalou, H. E., Shively, L., Slaven, J. E., & Davis, S. D. (2019). Polysomnography reference values in healthy newborns. Journal of Clinical Sleep Medicine, 15(03), 437–443.
  6. Grigg-Damberger, M. M. (2016). The visual scoring of sleep in infants 0 to 2 months of age. Journal of Clinical Sleep Medicine, 12(03), 429–445
  7. Patel A.K., Reddy V., Araujo J.F. (2020). Physiology, sleep stages. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing.
  8. Crosby, B., LeBourgeois, M. K., & Harsh, J. (2005). Racial differences in reported napping and nocturnal sleep in 2- to 8-year-old children. Pediatrics, 115(1), 225–232.
  9. El Shakankiry, H. M. (2011). Sleep physiology and sleep disorders in childhood. Nature and Science of Sleep, 3, 101.

この記事を書いた人/ねんねbase
みんなが笑顔で子育てできる世の中に。夜泣きや寝かしつけで悩むママ・パパへ