赤ちゃんのおしゃぶりについて、使うべきか悩む親御さんは多いのではないでしょうか。
おしゃぶりにはメリットとデメリットがあり、使用する際には正しい知識があると助けになります。
今回は歯科医でもある睡眠コンサルタントたなかゆみが、歯科医の視点から、おしゃぶりの影響や使用方法、おしゃぶりとねんねについて詳しく解説します!
おしゃぶりとは?
おしゃぶりは、赤ちゃんが口にくわえて吸うために使われる道具で、乳首に似た形をしています。赤ちゃんは生まれつき吸う反射(吸啜反射)が備わっているのでおしゃぶりを吸うのは自然なことです。おしゃぶりは不安を和らげ、落ち着かせる効果があるため、赤ちゃんにとって心地よいアイテムとなります。
おしゃぶりのメリット、デメリット
次に、おしゃぶりのメリットとデメリットについてお伝えします。
メリット
安心感と落ち着き:
赤ちゃんは吸う動作で安心感を得ます。特に眠る前やぐずりやすい時間におしゃぶりを使うことで、リラックスしやすくなります。
乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスク低減:
寝るときにおしゃぶりを使うことで、乳幼児突然死症候群のリスクが低下するという報告もあります。
保育者の負担軽減:
おしゃぶりを使うことで赤ちゃんが落ち着くため、保育者の負担が減ります。
デメリット
歯並びへの影響:
長期間にわたって頻繁におしゃぶりを使うと、歯並びに悪影響を与える可能性があります。前歯が前に出る「上顎前突(出っ歯)」や、奥歯を噛み合わせても上下の前歯がかみ合わずすきまがあく「開咬(オープンバイト)」のリスクが高まります。
言語発達の遅れ:
おしゃぶりを頻繁に使うことで、話す機会が減り、言語の発達が遅れる可能性があります。
中耳炎のリスク:
おしゃぶりを長時間使うと、唾液が耳管に入りやすくなり、中耳炎のリスクが高くなるとも言われています。
母乳育児への影響:
生まれてすぐにおしゃぶりを使うと母乳を飲もうとする機会が減り、母乳の分泌が軌道にのりにくくなることがあります。
おしゃぶりを使うときに注意すること
おしゃぶりを使う際は、以下の点に気を付けてください。
①衛生管理:
おしゃぶりは清潔に保つことが重要です。定期的に消毒し、落としたり汚れた場合にはすぐに洗ってあげましょう。替えのおしゃぶりも用意するとよいでしょう。
②長時間の使用を避ける:
1日中おしゃぶりを使い続けるのは避けましょう。寝かしつけやぐずりがひどい時に短期間使用するのが望ましいです。ぐずぐずする原因を探らず漫然と使用するのは避けましょう。
③赤ちゃんに合ったサイズを選ぶ:
おしゃぶりは赤ちゃんの口の大きさに合った気に入るものを選ぶことが大切です。月齢に合ったサイズを選び、誤飲などを防ぎましょう。
おしゃぶりを使い始める時期
おしゃぶりの効果はなんとなくわかるけど実際使う時はいつ頃からがいいのか、悩む方も多いと思います。おしゃぶりを使ったらよく寝てくれた!なんて声も聞きますが、使い始める時期によっては及ぼす影響も異なります。
早産児:落ち着くことができたり、入院期間が短くなるメリットがあります。処置による痛みを防いだり、口腔トレーニングのためにおしゃぶりの使用を推奨しています。
生後1ヶ月以降:早すぎる段階でおしゃぶりを使うと、母乳育児に影響が出ることがあるため、生後1か月以降に導入するのが一般的です。母乳育児が安定し、赤ちゃんの成長が順調であれば、おしゃぶりの導入を検討しても良いでしょう。前述のとおり、SIDSのリスクを減らす可能性もあります。
生後6か月以降:寝ない時におしゃぶりの使用を検討するかもしれませんが、ここまで「おしゃぶり無し」で来たのなら、これ以降におしゃぶりを導入するよりも、お昼寝のリズムなどを見直してあげる方が「睡眠には有効」です。
1歳以降:これ以降はおしゃぶりを導入するメリットはほぼなくなります。
おしゃぶりは、低月齢で泣く時間も寝る時間も長い時にとても助けになります。しかし、だんだん自分で寝る力や自分で自分を落ち着ける力がついてくるので、生後6か月以降はおしゃぶりをあえて導入するという必要はなくなってくることが多いでしょう。
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おしゃぶりをやめる時期
低月齢ではお助けアイテムとなるおしゃぶりですが、おしゃぶりで寝ることや落ち着くことが癖になってくるとやめることに勇気が出ず、できるだけ長く使えるだけ使いたいと思うかもしれません。しかし長期間使用すると歯並びに影響はないかと気になりませんか?
日本小児歯科学会では「2歳を過ぎて奥歯のかみ合わせができた後もおしゃぶりの使用が続くと、歯ならび・かみ合わせに影響が出やすくなり、また唇の閉じ方や舌の使い方にも問題が生じやすくなります。乳歯の奥歯が生えてくる1歳半頃からやめる準備を始めて、2歳過ぎまでにはやめられるといいですね。」とコメントしています。
また、米国小児歯科学会では、生後18か月以降では歯並びや顎、顔面の成長に影響を与えるリスクがあることを警告しています。1歳を過ぎたら中耳炎のリスクを高めたり、おしゃべりする機会を奪うので日中常時おしゃぶりをするのはやめましょう。とも言われています。
これらを見ると、1歳半前後までは積極的に使いたい!と思うかもしれません。
おしゃぶりを使う方が長くよく眠ると思うかもしれませんが、実はおしゃぶりを使っても使わなくても睡眠パターンには違いがなく、夜泣きや親の介入の回数の差もないといわれています。おしゃぶりがないと寝ないと思い込むのは、意外と親の都合かもしれません。
もともと赤ちゃんはおしゃぶりが無くても寝る力は持っています。寝かしつけのパターンを変えるには、その変更を後回しにすればするほど大変で長期戦になってきます。
これを機にできるだけ長くおしゃぶりを使うのではなく、ご家庭それぞれに合ったおしゃぶり卒業のタイミングを考えてみませんか?
▶生後3,4か月頃:おしゃぶりが外れるたびに起きて泣いて呼ぶようになることがあります。昼夜の区別がつくようになり、睡眠パターンも大人のものと近くなってきます。睡眠環境や寝かしつけのタイミングを整えておしゃぶりに頼らない寝かしつけにも挑戦してみましょう。
▶生後6か月頃:一日のリズムがついてきて、舌が上に挙がるようになることで「液体を吸って飲む」口の使い方から「固形物を飲み込む」口の使い方も始まります。赤ちゃんの眠る力も十分ついてくるので、一日1~2回はでおしゃぶり無しの寝かしつけにチャレンジしてみましょう。
▶生後9か月頃:昼寝が2回になり、寝かしつけの回数は1日トータル3回程度に減ってきます。ネントレするなら1歳までが短期間でスムーズにおしゃぶりを卒業できます。
▶1歳3か月頃:昼寝が1回になり、寝かしつけの回数はさらに減ります。そろそろおしゃぶりをやめる準備に入りたいですが、この頃は自我も出てきておしゃぶりをやめるのは長期戦となることがあります。
▶1歳半から2歳:ここまでにはおしゃぶりを卒業していたい時期です。この頃の寝かしつけの変更には納得と安心が重要なカギになります。あせらずゆっくり話し合いをしながらおしゃぶりをやめていきましょう。
おしゃぶりのやめ方
おしゃぶりをやめる際には、段階的なアプローチがおすすめです。
まずは日中、お昼寝以外でおしゃぶりを使う時間を無くしていきましょう。
つぎに、寝る時のおしゃぶり使用は「就寝時から」やめていきましょう。夜はメラトニンという睡眠ホルモンが出て、身体は眠ろうとしているので夜からやめてみるのが効果的です。
1歳を過ぎている場合には、やめる前にはやめる日を決め、おしゃぶりの代わりに子どもが落ち着くねんねのお友達「ラヴィー」と一緒に寝たり、別の安心する手段を見つけてあげましょう。
子どもの好きなアイテムをお店に見に行き、「おしゃぶりの代わりにお家に迎えようか?おしゃぶり捨てられる?」と子どもに確認するのもよいでしょう。
おしゃぶりが寝る合図になっている場合は、新しく入眠の儀式「ねんねルーティーン」をつくるのもおすすめです。抱っこや絵本の読み聞かせや短時間の遊びなど、落ち着くものがよいでしょう。
やめる日を決め、おしゃぶりを卒業するという前向きなアプローチで、子ども自身のモチベーションを高めていきましょう。
まとめ
おしゃぶりは、赤ちゃんに安心感を与える一方で、長期間使い続けると歯並びや言語の発達に悪影響を及ぼす可能性があります。適切な時期に導入し、短期間使用することで、おしゃぶりのメリットを活かしながらデメリットを最小限に抑えることができます。子どもに合ったタイミングでおしゃぶりを卒業させることが、健やかな成長につながります。
おしゃぶりをやめる勇気がでないとき、いつ卒業するのがいいのか迷うとき、ねんねのプロは現在の赤ちゃんの状況やパパママの考えも考慮した上で、個別にアドバイスさせていただいています。
子育てに正解はありません。あなたの選択を応援します。ぜひ頼ってくださいね。
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【参考文献】
日本小児歯科学会:おしゃぶりはいつごろまで使っていてもいいのでしょう?,こどもたちの口と歯の質問箱
Rachel Y. Moon, MD: Sleep-Related Infant Deaths: Updated 2022 Recommendations for Reducing Infant Deaths in the Sleep Environment, Pediatrics (2022) 150 (1): e2022057990.
SUMI SEXTON,MD: Risks and Benefits of Pacifiers, American Family Physician, Volume 79, Number 8, 2009
Canadian Paediatric Society: Recommendations for the use of pacifiers, Paediatr Child Health. 2003 Oct;8(8):515–519.
The American Academy of Pediatric Dentistry: Policy on Pacifiers, THE REFERENCE MANUAL OF PEDIATRIC DENTISTRY
Dr. Harvey Karp, MD: How and When to Stop Pacifier Use, happiest baby